水彩画を描く上で、絵の具はもちろんのことですが、
紙はもしかしたらそれ以上に重要な材料です。
「水彩用画用紙」と一口に言ってもその種類は
まずは目の粗さ(細目、中目、粗目)、コットン(綿)の配合比率など、
様々で、特徴を知って選ぶことが大切です。
今まで水彩画に挑戦したけれど、
うまくいかなかった、ということがあれば
もしかしたら紙が原因かもしれません。
紙がふやけてしまった、表面がボロボロになってしまった…といったことで
残念な気持ちにならない、
おすすめの紙や、扱い方についても紹介します。
絵の具の持つ特性だけでなく、
紙によって色、筆致といった表現に関わってくるものなので
ぜひひとつひとつの紙の持つ個性を知って、
自分の描きたいイメージにマッチした紙を選んでみましょう。
そうなんだよ。一概に水彩画用紙といっても、目の粗さや形状で変わるから、
どんな作品にしたいかで選んだ方がいいよ。
水彩画用紙を使う理由
水彩絵具はいろいろな紙に描くことができます。
ただ、水彩紙は特に水をたっぷり使っていろんな技法を使うこともあり、
丈夫で絵具の発色を高めてくれて、そして水彩絵具の魅力を最大限引き出すための
「サイジング加工(にじみどめ)」が施されています。
「サイジング加工」は見た目ではわからないのですが、
にじみ止めがされているため、
水彩絵具にとって必要な表現をしやすくなる加工が
施されています。
また、水彩画用紙にはウッドパルプとコットンパルプが使われているのですが、
この配合によっても技法との相性も違ってきますし、
描き心地や仕上がりに差が出てきます。
コットンパルプを使っているコットン紙はこのサイジング加工をされているため、
きれいなにじみを作れ、しっかりとした重ね塗りができることが特徴です。
乾くスピードも適度にゆっくりなので、
その間にウォッシュやグラデーションを丁寧に仕上げることができます。
ただ、それだけ手間がかかっていることもあり
価格は高めです。
ウッドパルプは丈夫で価格も安く、100均などでも手に入るので手軽です。
小学校や中学校で使っていた、八つ切り画用紙などはウッドパルプがほとんどです。
絵の具の定着力や保水力が劣るため、絵の具の乾きは速いです。
夏休みの宿題などはこれで十分でしょう。
ただ、コットンパルプと比べてしまうと、
力が低い→重ねて塗った時に下の色が溶け出て濁る
保水力が劣る→ポロポロと垢のように紙が剥がれる
強度が低い→マスキングを剥がすと紙も剥がれる
薄い→描いているうちにふにゃふにゃになる
といった点で思い通りにならないことが起きてきます。
きれいなにじみやグラデーション、水気をたっぷり含んだ筆で
何度塗り重ねても耐えてくれることを望むのなら、
やはりコットンパルプを使いたいです。
最近はウッドパルプでも質の良いものが出てきていますが、
そうなるとお値段も高くなるので、それならコットン紙をお勧めします。
紙の形状で選ぶ
水彩紙を画材屋さんへ行って選ぶことになると、
たとえコットン紙を買おうと決めていても
どの”形”を選んだらいいのか迷うと思います。
そこで画材やさんのコーナーに並んでいる
水彩画の”形”を一つずつ見ていきましょう。
【ブロックタイプ】
四方を糊で固めてあるので、そのまま描いても、ふにゃふにゃとたわみにくい。
水張りの必要性がないので使い勝手が良く、端から端まで色を濡れる利点があります。
描いたものはパレットナイフやペーパーナイフのようなもので
きれいに糊から剥がします。
厚手の表紙がついていないので、持ち歩きの際の保護を考えると、
屋内での制作向き。
【リングタイプ】
いわゆるスケッチブックです。
めくり易く、扱いが楽。
描いた絵をめくって裏にすることで屋外やイーゼルでの制作にも安心。
途中描きのまま次のページも使える気楽さがあります。
簡単なスケッチには一番使いやすいかも。
しっかり描こうとすると水張り状態でないので、
紙の厚さにもよりますが、たわみは出ます。
最近はミシン目が入っていて本体から切り離しやすいものもあります。
【パッドタイプ】
天糊や本綴じになっていて、めくるのも楽で切り離しやすくなっています。
紙全体に色を塗ることができます。
使い方によってはたわみにくく扱えます。
【ロールタイプ】
水彩紙ロールと言われる形状のものがあり、
メーカーごとに規格(サイズ)も異なります。
好きなサイズにカットして使うので、大きな作品を描くことができます。
大量に購入することになるので、単価は安くなります。
水張りの必要があり、表裏がわからなくなることもあるので、
気をつけてください。
ロールされた外側が表です。
【ボードタイプ】
厚みのあるボードに水彩画用紙を貼り付けてある物です。
水張りやカットの必要がないため、
すぐに制作できる安易さがあります。
ただし、一枚の単価が高いです。
紙肌の違いで選ぶ
水彩紙には、その目の粗さを「細目」「中目」「粗目」の3段階で分けられています。
同じ水彩紙でも、バリエーションのあるものがありますので、
ウォーターフォードの3種の水彩紙で比べてみました。
【細目】はどちらかというと凹凸を求めない平坦な表現に向いています。
他の目に比べ、凹凸が少ないため、ツルッとした質感です。
色の伸びが良く、細密画や、ペンと併用するような
シャープな表現のしたいときに向くようです。
一方で、中目や厚めに比べて色の乾きが早く、
初心者にとってムラのないウォッシュはちょっと難しいでしょう。
同様に、広い面でのグラデーションもコツがいります。
【中目(コールドプレス)】は適度な凹凸があり、
自然な仕上がりになるように思います。
パステルやコンテ、チャコールのような画材にも向いています。
にじみ、ぼかしの技法と相性が良く、
色を均一に乗せやすく、扱いやすいので初心者にもおすすめです。
粗目ほどではなくともウォッシュやグラデーションもきれいに描けます。
技法や画風を問わず使えるため、愛用されている目の粗さです。
ただ、メーカーによって中目といっても様々です。
紙の厚みも関係するでしょうが、
実際に使ってみてその特徴で使い分けたり、
お気に入りのものを見つけてみてください。
【粗目・荒目(ラフ)】は肌目が凹凸が深く、絵具そのものの発色がきれいに見えます。
細目や中目に比べて、乾くまでの時間がかかるので、
グラデーションを活かしたいときや、
重ね塗りでより深みのある表現をしたいときに向いています。
細目と対極で繊細な描写には向いていませんが、
かすれなどの面白さや筆致の表現で躍動感を出したりと、
描いていて楽しめます。
本当だ〜。こんなに違いがあるんだ!どうやって選んだらいいか、迷うなぁ。
水張りが大変なら、手間のかからないブロックタイプやボードがいいかな。
目の選び方は、初心者でも扱いやすい中目がおすすめだよ。
紙ってそんなに種類があるの?