水彩画を描くのに用いられているのは、どんな絵の具でしょう。どんな道具を使ったら、描いてみたいなと思う絵を、描けるのでしょうでしょう。基本的には、小学校で使っていたお絵描きの道具一式あれば描くことができます。カバンの中には、絵の具、パレット、筆、そして筆洗バケツ…が基本でしたよね。
今回はその道具の中の肝心かなめ、絵の具について、解説していきます。
水彩絵の具の種類
絵の具の形状で固形なのかチューブに入っているのかという違いもあるし、顔料と水溶性樹脂の配合の比率で、透明水彩なのか不透明水彩なのかに分かれるよ。
水性絵具というと、水で溶いて使う絵の具ということなので、
例えばテンペラ画やフレスコ画という古典技法も水彩画の一種なのです。
日本画の岩絵具や顔彩といった絵の具も、水性絵の具になります。
今では一般的に水彩絵の具というと、大きくその特徴から
小学校のときに使ったお馴染みの絵の具「半透明水彩絵の具」、
にじみや微妙な表現が得意で塗り重ねの技法が活かせる「透明水彩絵の具」、
塗りムラができにくく厚塗りがしやすい「不透明水彩」の3つに分かれます。
その3種類とも顔料と水溶性樹脂を練り合わせて作っています。
透明水彩絵具は顔料を少なくして
水溶性樹脂であるアラビアゴムの量を多くしてあるため、
透明感のある仕上がりとなります。
また、塗って乾いた上に重ね塗りをすると、
下の絵の具が透けて見えるため、紙の上で混色することができます。
不透明水彩絵具は反対に、顔料の量を多くしてあるために、
濃い色彩で鮮やかな表現をすることが可能です。
重ねて塗ると下の色を覆い隠すため、混色するときはパレットで混ぜるようにします。
絵の具の特徴
どの絵の具で描いたらいいのかな?迷っちゃうね。
絵の具の持っている特徴を活かして、描きたいイメージに近づけるように使い分けられたらいいね。
それぞれの特徴を詳しく紹介していきましょう。
①透明水彩
透明水彩絵の具は、
風景画やポートレートなど様々なジャンルの絵画に広く使用されています。
透明性:透明水彩絵の具は水と絵の具のみでできているので、
水で薄めることによって透明度を調節することができます。
薄い色目と濃い色目を使い分けることで、絵画に奥行きや層を与えるのに役立ちます。
柔軟性:透明水彩絵の具は表現技法が豊富なので、
いろいろな効果を生み出すことができます。
濃淡をつけたり、ウォッシュ(水彩の薄い塗りつぶし)を使ったり、
ウェット・イン・ウェット(湿った紙面に絵の具を塗る)を行ったりすることが可能です。
調色の自由度:透明水彩絵の具は油絵具などと違って、必要な色を容易に混色できます。
このため、無限のカラーバリエーションを作り出すことができます。
速乾性:水彩絵の具は一般的に速乾性があり、素早く乾燥する特徴があります。
なので、作品を素早く仕上げたり、レイヤーを重ねて作業を進めたりすることができます。
軽量性:透明水彩絵の具は水性で、乾いた後も比較的軽量なので、
作品の保存や持ち運びが容易になります。
②不透明絵具
対して不透明水彩の特徴は、
不透明性:不透明水彩絵具は、通常、顔料に白や他の不透明な材料が含まれています。
そのため、透明水彩と比較して、より不透明で覆いが強く、色の鮮やかさが増します。
この特性は、色彩の境界線を際立たせたり、色の鮮やかさを求める場合に有用です。
遮蔽性:不透明水彩は透明水彩よりも遮蔽性が高いため、
下に塗られた色や線を覆い隠すことができます。
と、いうことは修正や修復が容易になります。
厚塗り可能:不透明水彩は、通常、透明水彩よりも厚塗りに適していて、
立体感や質感を表現するのに役立ちます。
柔軟性:不透明水彩も透明水彩と同様に、様々な技法や表現方法に対応する
柔軟性があります。
濃淡をつけたり、ドライブラシテクニックを使ったりすることができます。
速乾性:不透明水彩も一般的に速乾性がありますが、厚塗りや混色を行う場合は、
完全に乾燥するまで時間がかかることがあります。
不透明水彩は、特にポスターやイラストレーション、デザインなど、
色彩の強い表現が求められる場面で人気があります。
ポスターカラーも不透明水彩絵具に分類されます。
絵の具の選び方
透明水彩と不透明粋さにはずいぶん違いがあるんだね。
と、思うでしょう!けれど、もとは同じ顔料なんだよ。水溶性樹脂の割合の違いで、仕上がりや風合いが変わるんだよね。
【絵の具の特性を活かす】
作品の質感として、
透明水彩は薄く塗ることが多く、柔らかな質感や透明感を表現することができます。
不透明水彩は厚塗りや遮蔽性が高いため、より立体感や質感を強調することができます。
透明水彩と不透明水彩は異なる雰囲気や効果を作り出します。
どんな表現をしたいのかという意図や作品に求める効果によって、
それぞれの持ち味を活かせたらいいですね。
なので、透明水彩にするのか、不透明水彩で描くのか決めなければいけない
ということもありません。
仕上がり、風合いでフワッとした透明感のある画面を構成したければ
透明水彩寄りの作品が描きたければ透明水彩絵具メインで描けば良いし、
不透明水彩の力強さで作品を存在感のあるものにしたい場合は
不透明水彩絵具のをメインにすれば良いと思います。
同じテクニックを使っても仕上がり具合が違ってくるので、
まずはたくさん描いてみて、絵の具の持ち味を知ることが一番です。
代表的な技法(テクニック)の例
ウォッシュ
ウォッシュは、大きな領域を均一な色で塗りつぶす技法です。
絵具を水で十分に薄め、広い面積に色を広げます。
ウォッシュは、絵画の下地を作る際や背景を塗る際に一般的に使用されます。
ウェット・イン・ウェット
絵面が乾く前に、もしくは紙に水を塗布し、その上に透明水彩の色を塗ります。
水に色が染み込むため、
柔らかくぼかされた効果が生まれます。
ウェット・イン・ウェットの技法は、ほぼ透明水彩も不透明水彩も同じです。
不透明水彩と透明水彩の違いは上記にも書いたように、
水溶性樹脂であるアラビアゴム糊の含有量です。
なので、水を多めに溶くことで、不透明水彩も透明水彩と同じような
ウェット・イン・ウェットの技法を使っていきます。
下の動画は不透明水彩を使って描いているので、見てみてくださいね(音が出ます)。
リフト・アウト
リフトアウトは、乾いた透明水彩の上に水や湿った筆を使って色を取り除く技法です。
これにより、明るいハイライトや細かいディテールを描き出すことができます。
紙が乾いた後に筆を水で湿らせ、
特定の部分を軽くこすることで色を取り除きます。
または、ティッシュペーパーや布を使って湿った色を吸い取ることもできます。
湿った筆や布を使って、部分的に色を取り除くことで、ハイライトや陰影を演出します。
これにより、深みや立体感を強調できます。
不透明水彩(ガッシュ)のリフトアウトを使って、空の雲を描いていますので参考にしてくださいね↓(音が出ます)
ドライブラシ
ドライブラシは、水彩絵具を水であまり薄めずに、
筆に含ませた状態で乾いた紙やキャンバスに塗る技法です。
筆に含まれた絵具が乾燥した表面の凸凹やテクスチャーに接触するため、
色が不規則に塗られ、質感豊かな効果が生まれます。
この技法を使用することで、
木の木目や岩の質感など、自然の模様を表現するのに適しています。
また、物体の輪郭やディテールを強調するのにも役立ちます。
ウェット・オン・ドライ
紙が完全に乾いている状態で、水彩絵具を筆に含ませて色を塗ります。
透明水彩でこの方法を使うと、
まるでセロファンを重ねたように下の色が透けて見える効果が出ます。
また、はっきりとより正確な線やディテールを描くことができます。
マスキング
マスキングテープやマスキング液を使って部分的に覆う方法です。
白く残したい部分や、部分的に特殊な表現をしたいとき、
背景などを一気に塗りたいときなどに使えます。
また、光の当たっているハイライトに使用します。
下の動画↓(音が出ます)で上記の5つの技法を紹介していますので、
どんな風に使っているか、見てくださいね。
その他にもいろいろな技法がありますので紹介すると、
グラデーション
色を重ねる前に、筆に含まれた色を徐々に薄めていくことで、
滑らかなグラデーション効果を作り出します。
ソルト(塩)
塩を使った技法では、湿った絵の上に塩を撒き、塩が絵具と反応することで特殊な模様が生まれます。
塩の粒子が絵具を吸収し、周囲の色に影響を与えることで、
興味深いテクスチャーやパターンが生まれます。
塩の種類や粒度によって効果が異なるため、実験してみると良いでしょう。
バックラン
バックランは、湿った絵の上に水や色を追加することで、色が既存の色に浸透して広がる現象です。
通常、これは予期せぬ効果として現れ、絵画に深みや興味深い模様をもたらします。
バックランは、絵具が湿った領域に追加されたときに発生し、
絵具の濃度や紙の吸水性によって影響されます。
スパッタリング
スパッタリングは、筆を指で弾いて、細かい水彩絵具の飛沫を絵の上に飛ばす技法です。これにより、興味深いテクスチャーやパターンを作り出すことができます。絵具の濃度や筆の弾き方によって、異なる効果を生み出すことができます。
レイヤリング(ウェット・オン・ドライ
色を薄く塗った後、完全に乾いたらさらに色を重ねていきます。
そうすることで深みや立体感を演出することができます。
水彩絵具を水であまり薄めずに筆に含ませ、乾いた紙やキャンバスに色を塗ります。
明るく鮮やかな色合いやテクスチャーが生まれます。
スクラッチング
乾いた絵の上に刃物や特殊なツールを使って、細かい線や模様を彫ります。これにより、興味深いテクスチャーやディテールを追加できます。
ひとつずつ、楽しみながら絵を描く中で使っていけばいいんだよ。
楽しみながら…そうだね、まずは描きながら技法を試してみたいな。
これから描いていく絵の中で、どんどん紹介していくよ!
まとめ(おすすめの絵の具の選び方)
このように、
水彩絵の具には透明絵の具と不透明絵具、そしてそれぞれの性質があり、
技法も同じように使えたりそれぞれの性質を活かしたりしながら
使い分けることができます。
なので、
描きたい絵の目的や表現したいイメージに合わせて
使い分けていくことが大切です。
作品の性質や、表現したい効果に応じてどの絵具を使うか選んでいきましょう。
透明水彩は柔らかで透明な色を生み出すのに優れていますし、
不透明水彩は鮮やかな色やよりカバー力のある色で表現したいときに適しています。
どちらかの特徴を最大限に活かした作品も描ければ
両方を組み合わせてそれぞれの特徴を生かした作品もできます。
考えているよりも、どんどん描いて表現してみましょう!
描いているうちに、自分の好きな描き方がわかってきて、
どんな技法をどこで使ったらいいか身についてきますよ。
今回は、文字での解説が多くなったので、次回から描きたい絵に合わせてどんなテクニックをどこで使っていくかを紹介していきますね。
お楽しみに!
(こちらで使用した画材を紹介していきます)
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水彩絵の具って、どんな種類があるの?